コンデジやホームビデオなどでは、10倍〜20倍くらいのズームが珍しくありませんが、デジタル一眼では少し特殊なレンズになります。ズームレンズには、大きく分けて2種類があります。広角域のズームと望遠域のズームです。
広角域では例えば18〜55mm、望遠域では55〜200mmとか、あるいは80〜400mmとか200〜600mmとか。要するに約3〜5倍程度のズームが多いと思います。
近年「高倍率ズーム」と言われているのは、10倍くらいの領域をカバーするズームレンズのことです。
私自身が持っているので言えば、18〜200mm(APS-Cの場合35mm換算で27mm〜300mm)です。
つまり1本のレンズで、広角、標準、望遠を兼ねてしまえる1台三役のレンズなのです。
1本のレンズで同じ被写体で複数の世界観が撮れる。
1台三役のレンズというだけでも便利そうなのは分かります。これが便利以上に面白いのは、1つの被写体で異なる世界観、空気感の写真が撮れることです。広角域から望遠域が写せると言うことは単に画角が変わるだけではなくて、写真の奥行きの圧縮感や画面の歪みなども変わります。圧縮感や画面の歪みが変わると写真の空気感や世界観自体が違ってきます。まったく異なる味わいの写真が1本のレンズで撮れてしまうわけです。
シャッターチャンスが増える
また、動きものなら、遠くから近くまで追いかけることができます。鉄道等なら、望遠でアップを撮ったり、背景を大きく入れて撮ったり、近づいて来たらどアップで迫力のある絵にしたりと言うことが1本の列車で可能です。それぞれに世界観や空気感が異なるため、1つの被写体でいくつものドラマ(写真の世界観)をつくることができます。同様に運動会やイベント、あるいは動き回る子供の記録などもいろいろなアングルや空気感で追いかけて撮ることができます。これは3倍程度のズームでは実現できません。単焦点や通常のズームで諦めざるを得なかったアングルやシャッターチャンスを捨てなくて良くなるワケです。まるでお宝を掘り出すような感じです。
ただしレンズが重い高い。
利便性という面では、レンズを複数持ち歩かなくて良いし、レンズ交換の手間も不要です。複数の世界観が撮れるし良いことづくめのようですが、ただひとつウィークポイントがあるのは、レンズが重いことです。やはり構成要素が多いので一般的には3倍ズームよりは少し重いです。しかし、それを補っても余りあるくらいのメリットがあります。価格も少し高くなりますが、中古レンズを上手く探せば安く手に入れられます。
とにかく便利なので高倍率ズームを持つとそればかりになってしまいます。広角域ではなく標準から超望遠域(例えば50mm~500mm)といいうような高倍率ズームもあり、野生動物やスポーツの撮影にはとても便利です。
最近はボディと2種類のズームレンズがセットになった売り方があり、大概が広角-標準、標準-望遠のレンズですが、高倍率ズームを買えばその2本は実際問題不要になります。ただし繰り返しになりますが、少し重いので、望遠が不要な場合には広域側の軽いズームレンズも持っておく方が良いかも知れません。
高倍率ズームの実際
※( )内の数値はレンズでの表示であり、APS-Cなので実質的な数値は1.5倍になります。
風景
明石大橋を撮ってみました(18mm)手前の建物の屋根が目障りなので少し遠くへ(36mm)


200mmで遠くを見ると航行する船も分かります。船と海岸の風景を同時に入れると(62mm)。


一方200mmで橋の方を見ると橋脚が幾何学模様のように写ります。50〜60mmくらいで縦アングルにすると橋がバランス良く収まります。


動くもの
鉄道の場合は動きがあるので、どんぴしゃの画面を切り取ることが難しくトリミングして整えます。遠方から来る列車を200mmで撮るとある程度圧縮効果がでるのでカーブの具合などが上手く収まります。近づいてくる列車を200mmでギリギリまで引っぱるとほどよく圧縮効果が効いた写真になります。


さらにズームを引いていくと、圧縮効果は薄れてパースペクティブ(奥行き)が強調され始め、列車の編成の長さが強調されていきます。スピード感もでてきます。


さらに引いて18mmでは、近接してきた機関車の奥行き感が強調され迫力のある画面になります。
圧縮効果とワイド効果の比較。この写真が1本のレンズで撮れてしまう便利さ!


近づいて来た列車と共に近くのすれ違いも撮影できるのは高倍率ズームならでは。




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