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フィルムカメラの話。

カメラの話

フィルムカメラの流行

最近(2025年4月時点で)、フィルムカメラが若者に人気らしいです。それもメーカーがわざわざフィルムを再生産し始めるというのは、それなりのマーケット規模になっているということでしょう。音楽の世界でも、アナログレコードが復活してどんどん生産量が増えているというのと似ている気がします。面白いものです。

NHK「フィルムカメラ人気再び なぜデジタル世代が夢中に?」

フィルム時代を経験してきた私などは、やはり「写真を撮る」という実感は圧倒的にフィルムの方があります。とにかく現像してみないと、あるいはプリントしないとどう写っているか分からないと言う不確実性が面白いというか、ワクワクするというか遊びとして面白いですね。

写真を仕事にするならデジタルの方が圧倒的に利便性が高いですが、趣味としての写真は利便性より楽しいかどうかです。
デジタルなら数値などを参考にするとかなり狙った通りの写真が撮れますが、フィルムの場合は揺らぎが大きいと思いますし、現像〜プリントの工程でも不確実性が介在します。つまり、不確実性が面白いわけですね。だから「作品」としての写真にはフィルムの方が自分でも思ってもみなかった写真になる可能性があります。

かつてファッション界では、カラーフィルムで撮った写真をカラーコピーしてそれをまたカメラで撮るというような技法が流行したことがありますが、予想外の印影や滲み歪みなどが発生し味わい深い写真になったりしました。そういう加工性もアナログで行う方が不確実性が増えて面白いのだと思います。

だから趣味で写真をやるならフィルムカメラを使ってみるのも面白いと思います。モノクロフィルムでも現像してプリントすると、デジタルにはない味わいがあります。今のデジタル技術なら同様の味わいは再現可能だと思いますが、不確実性の部分がないのでどうしてもわざとらしくなるかも知れません。ただ今はフィルムは高いのでコストはかかりますが。

カメラの進化で得られること失うこと

カメラがデジタルになって思い存分シャッターを切ることができ、すぐに写真が確認できるようになって、より精度高く写真が撮れるようになりました。「とりあえずシャッターを切っておく」ができるようになったからです。フィルムの時代はそうはいきません。現像代やプリント代が発生するので、無駄なカットはできるだけ撮りたくありません。持っていくフィルムにも限界があります。デジタル一眼のように連写して何百枚も撮るなんてことはありません。1枚1枚入魂で撮っていくので、1カットへの思いは強く深くなります。

デジタルは便利ですが、こういう1枚への思いというのはどうしても軽くなってしまっているのではないでしょうか。1つのアングルから撮るにしても、とりあえず少し角度を変えて数カット撮る。露出を変えて数カット撮るということはデジタルではよくありますが、フィルムでそれをしているとあっという間にフィルムがなくなってしまいますし、無駄なカットのために現像代プリント代がかかります。

また、デジタルはその場で写真を確認できますが、フォルムは現像するまで確認できません。それだけに仕上がりを想像しながら究極の1枚を撮らないといけないわけです。その辺が不便でもあり面白いところだと思います。現像が上がってくるまでワクワクします。この被写体と対峙しながら究極の1枚と撮って現像を待つという過程の面白さはデジタルにはない楽しさです。

デジタルは便利ですがこの不便故の楽しさはありません。もちろん便利故の新しい楽しみもデジタルにはありますが。フィルムのアナログな楽しみは、手作りクラフトの楽しみにも似ていると思います。

フィルムは自分で現像しプリントもするとさらに楽しみも広がります。フィルムのプリントをするとなると引き伸ばし機や現像道具が必要になってくるので少し大がかりになりますが、プリントの味わいは、デジタル写真をプリントアウトしたモノとはまた違う味があると思います。覆い焼きや露光時間の調整などをしながら写真のトーンを変えることができます。・・・とここまで書いてところで調べてみたら、引き伸ばし機というものが今は販売されていないような気がします。
*参考:WIKI

自宅で現像できるセットも売られているようです

今はプリントやネガをスキャンしてデジタルデータにできるから便利ですしね。それをプリンターで出すと言うことか。いやいやしかし、それだとフィルムの楽しみが半分で終わる。フィルムで撮るなら焼きつけもしなきゃぁ。ネットでは自分で引き延ばしてプリントすることも紹介されているようですが、引き伸ばし機はどうやって調達するのだろう。

フィルム時代の思い出。

フィルムは多くても36枚撮りで1本で撮れる枚数に限りがありました。撮り終えたらフィルムを交換しなくてはいけません。鉄道などでは走ってきた列車を何カット撮るのかをあらかじめ想定してフィルム残量を考えておかなくてはなりませんでした。5カットくらいは撮るのにあと2まいしか残っていないときはもったいないけどフォルムを交換しなくてはなりません。また、DPE店(写真店)に現像に出す場合はすべてプリントされ料金が発生するので極力ムダなカットは撮らないようにしなければなりません。そして、根本的にフィルム1本1本にお金がかかります。それは大きいですね。デジタルカメラはデータをパソコンなどに移してメモリーカードを空ければまた撮影ができます。要するにメモリーカードさえあればずっと無料で写真が撮れるわけです。

フィルム時代は、そうはいきません。鉄道雑誌などによく載っていたコダックのTRY-Xというフィルムを使っていましたが、日本製のフィルムより少し高く学生の身にはフィルム代が大きくのし掛かりました。

なんとかフィルム代を安く上げようと100フィート缶というのを買ってきて、36枚撮りの長さに切って空きパトローネ(どうやって手に入れたかは忘れてしまった)に詰めるわけですが、フィルムなので少しでも光があると感光してしまいます。苦労して撮った写真に使ったフィルムのパトローネの締め方が甘かったせいで、巻取った際に開いてしまい撮影したフィルムが1本感光しておじゃんになってしまったこともあります。また10日くらい撮影に行く際には、たくさんのフィルムを持っていかなければいけないので(当時は便利な宅配便というものがなかった)リュックの中で場所を取っていました。

Amazonで売られている100フィート缶

また、昔のフィルム時代のカメラには、今のようなオートフォーカスや露出のオートもなかった(測光システムはあった)ので、常にマニュアル撮影です。そのため、経験を重ねていくうちに、この場面ならシャッタースピードや絞りをいくらに設定したら良いかというのがだいたい分かるようになってきます。間尺ができるというのでしょうか。そういう自分の経験値が上がっていくのも楽しさにつながります。

フィルムを安く調達する技。〜手動でパトローネに詰める技〜

昔と違って今はフィルムが貴重品になってしまいました。モノクロでも1本1500〜2000円とかするんですね。昔は、フジのネオパンが1本200円くらいだったと思います(貨幣価値も違いますが)。コダックのTRY-Xが「高いなあ」と言っても480円とかそのくらいだったような・・・。前述のように100フィート缶を買ってきていたわけですが、100フィート缶は、今でも一部のメーカーであるらしく、それを切ってパトローネに詰めて安く上げるという技は行われているようです。まともに買うより1本あたり半額近く安くなるのではないかと思います。しかし手間はかかります。パトローネに詰める機械も売っているようですが、そこそこ高額のようで、よほどの頻度がないと安く上げたいのに逆効果です。

1.準備

暗室もしくは夜中に真っ黒にできる部屋

自宅に暗室がない場合(大概そうでしょうが)、夜中に部屋を真っ暗にして作業します。この真っ暗は、本当に真っ暗でなければなりません。少しでも光があるとフィルムが感光してしまいます。特に窓からの夜の光が気付かなかったりするのでくせ者です。窓に遮光カーテンや雨戸、シャッターなどがない場合は、黒い幕などで窓をぴっちり覆う必要があります。これを怠ると100フィートがダメになります。

手探りで1本分1.5mが分かるもの

100フィートのフィルムを真っ暗な中で手探りで切りますので、手探りで1.5m(36枚撮りの場合)が分かる様に棒を用意するとか、柱に分かる印をしておくとか、そういう自分がやりやすいものを用意しなければなりません。ちなみに真っ暗な中での作業は想像以上に真っ暗(笑)で、何も分かりません。要は目を閉じた状態と同じなので、目を閉じたりアイマスクをしたりして予行演習をやっておいた方が良いと思います。

空のパトローネ

フィルムを詰めるパトローネが必要です。100フィートから36枚撮りなら18本くらい取れるはずです。パトローネは、今はAmazonなどで売っています。昔は、たしか写真店などで捨てるパトローネをもらってきたような気がします。なにせ、デジタルなどかけらもない昔のはなしですからね。

Amazon.co.jp

100フィート缶

一部のメーカーから出ているようです。残念ながら昔使っていたコダックのTRY-Xは100フィートはないようです。

2.明るい場所でのリハーサル

使用済みのフィルムや没っても良いフィルムを使ってリハーサルをします。パトローネにはどうやって挟んであるのか、どうやって閉じるのか、最後のベロはどうなっているのかを既存フィルムで確認しておきます。これは欠かせません。何がどうなっているかをよく目に焼きつけておかないと、手探りでやったときに想像できませんので。

3.本番の準備

パトローネを分解して手探りでも分かるように置いておきます。長さを測る〜切る〜詰める〜完成品を置くという流れが手探りで分かるように作業場を配置しておきます。

4.本番と詰め方

夜中になって部屋を真っ暗にしたら、単純に100フィートのフィルムを1.5mに切ってパトローネに詰めて行くだけです。しかし、真っ暗な中での手探りなので結構難しいです。最後は少しベロを出しておく必要があります。くれぐれもパトローネはしっかり閉まっていることを確認することが重要です。少しでもパトローネが開いていると、灯りをつけたら光が入って努力が水の泡になります。

5.仕上げ

詰め終わったら灯りをつけベロの部分をカメラの巻取り軸に挟みやすいように切り欠きます。これで完成です。作ったフィルムは湿気を防ぐために必ずポリのケースに入れておきましょう。

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